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間に合っていないからこそこだわってしまう
——お二人がこうした古いホームページの発掘、復元をするようになったのは、どういったきっかけがあったのでしょう?
杵築沢そこを聞かれるとちょっと弱いんですよね。
——弱い、といいますと?
煙岡実は、我々はインターネットの黎明期は疎か、テキストサイトの全盛期すら知らないんですよ。リアルタイムでは見ていないんですね。
——お二人ともテキストサイトを語るには少し、お若い世代のようにお見受けします。失礼ですがお幾つなのでしょう。
杵築沢僕が23になったところです。
煙岡僕が来月で24になるところです。
——それでしたら90年代末の、インターネット黎明期の頃というのは……。
杵築沢小学校の高学年になるところでしたね。
煙岡その頃は二人とも、インターネットとは無縁の生活を送っていました。テレビでアニメを見て、マンガを読んで、ゲームボーイでポケモンをやって、プレステでゲームをやって……みたいな感じで90年代の子供の典型でしたよ。
——当時からお知り合いだったんですか?
杵築沢違います。
煙岡生まれ育った地方からして別でしたよ。彼は東北のほうで、私は西のほうですから。
——では、お二人が初めてインターネットに触れたのはいつごろだったのでしょう。
杵築沢僕はmixiのときかなあ。その頃初めてパソコンを買ってもらったんだよなあ。
煙岡私の場合は2006年ぐらいですね。高校に入るときにパソコンを買ってもらったので、そこから本格的にインターネットに触れるようになりました。mixiが話題になっていて、友達もみんなそこで日記を書いてましたね。ちなみに我々が出会ったのもそこでしたよ。mixiの同じコミュニティに出入りしてたもので。で、以降は、ネットの流行に従ってYouTubeやニコ動、それからSNSやLINEを使っていって……みたいな感じでしょうか。
——2ちゃんねるは利用されてましたか?
杵築沢殆ど使ってませんね。
煙岡2ちゃんねるは、我々の世代が使うものではありませんね。我々よりもひとつ上の世代が集まっている場所という感じがします。逆に、古いホームページの情報を集めるには有益なので、その点では利用していますが、純粋な意味でのユーザーとして使ったことはありません。
——はあ……なんだか急にジェネレーションギャップを感じてきました(笑) では、どうしてご自身では実際には体験していない古い時代のホームページに対して、発掘や復元をしてしまうほどの魅力を感じておられるのでしょうか。
杵築沢現在では失われてしまった"創世記の魅力"ですね。
煙岡先ほども少し触れましたが「何かが始まりつつある」という時代の曲がり角に特有の空気が詰まっている点です。あの頃のホームページを見て、大げさではなく、歴史を目の当たりるするような面白さを感じたんですね。
——その時代を体験していないだけに、よけいに新鮮だったのでしょうか?
杵築沢(何度も頷く)
煙岡そうだと思います。何事に因らず歴史の研究というのは、その時代に間に合っていない後世の人間が、その間に合わなかった事実を埋め合わせるためにやるものなんじゃないでしょうか。
——しかし、リアルタイムでインターネットの黎明期を体験されていないということは、果たして、何をきっかけに古いホームページの存在を目にされたのでしょう? mixiが流行した頃にはもう、昔ながらの個人のホームページは下火になっていたと思いますが……。
杵築沢阿部さんのところですね。
——阿部さん、というのは?
杵築沢俳優の阿部寛さんのホームページです。
——ああ。なるほど。
煙岡初めてあのページを見た時には正直なところ「?」がいくつも頭に灯りました(笑) いったいこりゃなんだ、と。
——阿部寛さんのホームページはいま(2014年6月)でも、開設当初の雰囲気そのままの体裁で運営されていますからね。
杵築沢シーラカンスやカブトガニを見た時のような感激がありましたよ。
煙岡”生きる化石”を目にしたときって、なんというか、その姿から壮大な歴史を感じませんかね? 「何億年も昔から、ずっとこの姿で生きてきたんだ」みたいな、壮大な感激が沸き起こってきませんか?
——そうですね。何億年もの時間を飛び越えるというか、何億年前の時代と時間を共有しているような、不思議な感覚を覚えます。
煙岡そんな感覚をあのページに持ってしまったんですね。それからというもの、いくつか残っていたそうしたホームページを探し出しては貪るように読み耽りました。それだけでは飽き足らず、ブックオフなど古書店を回って2000年前後に発売されたインターネット情報誌を買い求めて、そこに掲載されている当時のホームページの紹介記事も貪り読みました。
——当時は「インターネットマガジン」「Yahoo! internet guide」など紙の雑誌でインターネットやホームページの動向を追うのが当たり前でしたからね。
杵築沢そうした古い情報のすべてが新鮮でしたよ。
——でも、たとえ知らないからこそ新鮮に見えたとはいえ、内容的にはがっかりすることも多かったんじゃないでしょうか。たとえばデザインひとつをとってみても、現在のリッチコンテンツを見慣れた目に、当時のホームページは極めて質素に映るでしょうし。
煙岡それは仰る通りですね。素人臭さ満点というか、日曜大工の感じというか……如何にも安っぽくて(笑) でも、そこがいいんです。
杵築沢(大きく頷く)
煙岡CSSやHTML5が当たり前に使われ、どうかすればFLASHですら古い技術になりつつ現在では、テーブルセルやフレームを使ったレイアウトなんて逆に見られませんからね。すばらしく貴重なものですよ。スペーサーに透明の画像が使われていたなんて、考えるだけで胸がキュンとします。
——そんなものてしょうか(苦笑)
煙岡レイアウトばかりではなく、アクセスした途端、埋め込まれたMIDIのオルゴールが突如として鳴り出したり、時間や日付でトップページの挨拶文を変えたり、ブラウザの下の部分にティッカーが表示されたり、マウスオーバーで画像が変わることに驚いたり、そういう失われた技術が満載で……考えるだけでもたまりません。
——たまりませんか。
煙岡失われた技術というのはただの使い古しではないんです。「あんなことが出来るようになった」「こんなことも出来るようになった」「こういうこともできるんじゃないか」と、みんなが試行錯誤と実験を繰り返してきたことの証でもあるんですね。そうして技術の取捨選択をしながら、少しずつホームページを、インターネットを進化させてきたんですよ。たとえるなら、大航海時代の船乗りたちが、危険を顧みず航海を繰り返して、少しずつ世界地図を完成させていったように、みんなでインターネットの世界を拡げてきたんですよ。
——なるほど。
煙岡失われた技術には、そうした時代の志(こころざし)が詰まっているんです。ですから私たちは、あの頃のホームページは文化遺産だと思っています。
杵築沢うん。あの頃のインターネットは、間違いなくもう文化遺産だな。
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