イントロダクション

その閲覧者にコメントをつけられると、ブログの運営者が一週間以内に必ず狂死するという設定で、多くの観客・ネットユーザーを恐怖のどん底に陥れた木里谷和明監督による映画『三十億アクセスの彼方に』(2004年)から15年。

この間に、インターネットを取り巻く環境は激変した。携帯電話がスマートフォンに取って代わり、それによってインターネットが多くの人々に行き渡った。ネット上の自己表現の手段も、ブログからより簡単なSNSへと変化した。

誰もが気軽に承認欲求を満たすことができる時代。情報の流通や流行もSNSから始まることが当たり前になり、人々の生活は便利かつスピーディーになった。しかしそれは、別の問題と恐怖を産む結果となった……。

インターネットを題材にしたホラー作品を数多く製作している木里谷和明監督が、豪華女優陣を迎えて4年ぶりに放つ、インターネット・ホラームービーの革命的作品にして最高傑作、ここに誕生!

あなたはいま、未知なる恐怖を体験することになる。

ストーリー

それは、ただのクソリプのはず……だった

元レースクイーンで現在はリサイクルショップ「半田屋」を経営しているミホ(長澤わさみ)のSNSアカウントに一つのリプライが寄せられた。いま大人気のタピオカの入った飲み物をようやく飲むことができた、という他愛のないツイートに寄せられたそのリプライは、いわゆるクソリプと呼ばれるものだった。縁もゆかりもない人物から寄せられる罵詈雑言に心を痛めるミホ。だが、やがてミホ自らが手当たり次第にクソリプを送るようになってしまう。

誕生時にミホと産院で取り違えられて以来、アラサーとなった現在まで親友付き合いを続けているラジオ局アナウンサーのレイコ(綾瀬ぱるま)は、ミホから突然に寄せられたクソリプに驚く。ミホに連絡を取り、リプライの真意を尋ねたが、ミホはそのリプライのことを憶えていなかった。

レイコはミホを連れ、街コンで一度だけ会ったことがある心理カウンセラーのチーコ(北皮景子)の元を尋ねる。チーコは、ミホの様子を見るや否や”クソリプゾンビ”と化してしまっていると答える。

クソリプゾンビ……それはSNSが世の中に広まってから産まれた新たな精神疾患で、これに罹患すると、SNSを閲覧するたびに、他の誰かにクソリプを送らなければいられなくなってしまうのだという。さらに”クソリプゾンビ”からクソリプを送られた人も、同様に"クソリプゾンビ"と化し、やはり誰彼かまわずクソリプを送るようになってしまう。

治療法が見つかっていないこの疾患だが、チーコは世界中でひとりだけ"クソリプゾンビ"状態から正気に戻った人がいると話し始める。だが、それは噂話のレベルであり、実際にそんな人がいたとは思えないとも話す。そうしている間にもミホの症状は悪化の一途をたどり、ついには世界中の国家元首やローマ法王にまでクソリプを送り始めてしまう。

ミホを救い出したい一心で、レイコはネットと人脈を駆使して情報を集める。すると”クソリプゾンビ”状態から正気に戻った人物の所在を突き止めることができた。

ミホ、レイコ、チーコの三人は、その人物の元を訪ねる。その人物はトモという名の女子大学生(右原さとみ)。しかし彼女は、正気に戻ってから、自分がしたクソリプのひどさに絶望し、引きこもりとなってしまっていた。ミホ・レイコ・チーコの三人がどれほど面会を望んでも会ってすらくれなかった。

見かねたトモの父親である典功(東野英芯)が「娘は"クソリプゾンビちゃん"(キャロライン葉子)という少女と連絡を取り合うようになってから症状が良くなった」と教えてくれる。また、トモはオンラインゲームの中であれば会話をしてくれるかもしれないと教えてくれる。

ミホ・レイコ・チーコの三人は、引きこもりのトモとオンラインゲームの中で連絡を取りつつ、”クソリプゾンビちゃん”を探す旅に出る。しかしそれは、決して開けてはならない、インターネットのパンドラの箱を開けてしまうことでもあった。やがて彼女らは、とんでもないものを目にすることになる……。

キャスト

長澤わさみ半田美豊(ミホ)役

1988年生まれ、山梨県出身。2001年、『庶民的美少女コンテスト』でグランプリを獲得し芸能界へ。『ドン・ガバチョさんさようなら』('02)で映画初出演。『世界の中心でなんか叫ぶ』('04)で映画初主演を果たすと、14の映画賞・映画祭で主演女優賞を獲得。朝の連続テレビ小説『おさん』('06)に主演し、一躍国民的女優に。映画『デーモンズリング』('08)でハリウッド進出。2020年秋に公開予定の日中豪加合作映画『女王の帰還』で主役のサンダー杉山を演じる。主な映画出演作品に『泥縄太郎の生活と意見』('07)、『足がとってもかゆいんだ』('08)、『檜原村奇譚』('10)、『ちょっとマイ・ウェイ~THE MOVIE~』('13)、『太陽を抱いた女』('16)『林長二郎』('17)、『後ろから前から横から斜めから上から下から』('18)。

綾瀬ぱるま生原麗子(レイコ)役

1990年生まれ、神奈川県出身。2006年、雑誌『チコリ』でファッションモデルとしてデビュー。チコリガールズの3代目リーダーとして、ティーンの流行をリードする。2009年、恋愛模様を観察するリアリティ番組『テラリウム・ハウス』で、駄目男たちを一刀両断する役どころが大人気となり”2代目ゴッドねぇちゃん”と呼ばれる。その後、数々のテレビ番組に出演。2010年にはパリコレにモデルとして招待され、ランウェイを歩く。2011年、『二代目はクリスティーン』で映画初出演。2013年、『青梅線で逢いましょう』で映画初主演。主な映画出演作品に『TANTANたぬきの金次郎』('14)、『おっぱいカレー』('15)、『帰ってくるなウルトラマン』('18)。

北皮景子立川三惠子(チーコ)役

1992年生まれ、東京都出身。1993年から子役として活動を始める。1996年、『すびばせんね』で映画初出演。1998年、アイドルグループ「セーラーアース」を結成。イメージカラーは赤。1999年、『地球(テラ)にかわってお仕置きしマックス‼︎』がオリコン3位になり、紅白歌合戦に出場。2002年、セーラーアースが解散後、女優に転身。2004年、『ローリング・ドリーマー!』で映画初主演。2006年、『Fラン大学物語』で日ノ本アカデミー賞助演女優賞を獲得。主な映画出演作品に『お金をください』('09)、『恋の花咲く六義園』('11)、『かけめぐる青春〜ビューティー・ペア物語〜』('14)、『谷根千ブルース』('15)、『スマホを盗んだだけなのに』('17)、『博史の異常な愛情~または私は如何に心配するのを止めて水野を愛するようになったか~』('19)。

右原さとみ疋田智子(トモ)役

1995年生まれ、千葉県出身。2014年、帝都大学在学中に劇団「アリ・ブマイエ」を旗揚げ。2015年、第2回公演『ロジャー・ハウは静かに嗤う』で紀ノ国屋演劇大賞、岸田国士無双戯曲賞を受賞。2016年、映画『シン・ゴリラ』で映画初出演。2017年、小説『アパートメント・ハウスショー』で第18回本屋さんが本当に売りたいけど本当は読書好きにしか教えたくない本大賞受賞、織田君太郎賞受賞。2018年、映画『東京借景』で初監督・初脚本。2019年、劇団「アリ・ブマイエ」第4回公演『生き急げ、ものども。』は国内のみならず英国でも公演。2020年、東京五輪公式記録映画の監督を控える。

東野英芯疋田典功役

1968年生まれ、京都府出身。1990年、青春座に入団。1992年、『18人が知っている』で映画初出演。1997年『若者は戦争に行った』でブルーボタン映画賞最優秀主演男優賞。2000年『100人の桃太郎』でカンムリ映画祭で助演男優賞。2001年『プロゴルファー玲子』で日ノ本アカデミー賞助演男優賞。2005年長編アニメ『またぎのカンちゃん』で主役・カンちゃんの声優を担当。2009年『八百屋水滸伝』で日ノ本アカデミー賞最優秀主演男優賞。2012年『夕景の流れる街角』で初監督。2017年『鍵穴殺人事件』で初脚本。主な出演作品に『安寿と厨子王』('93)、『とっととトト子ちゃん』('96)、『掟破りの逆サソリ』('02)、『パリ雑言』('05)、『暮れ色は涙を連れて』('10)、『口内炎が痛いんだ』('16)。

キャロライン葉子クソリプゾンビちゃん役

2011年生まれ、沖縄県出身。2016年、沖縄アクターズアカデミーに入学。2017年、レディー・ググ『Joker Face』のMVに出演。2018年、テレビ帝都『とび出し坊やは止まれない』主役のとび出し坊や役で、テレビドラマ初出演。2018年、映画『散歩の力学』で日ノ本アカデミー賞・助演女優賞を史上最年少で受賞。

監督インタビュー

木里谷和明Kazuaki Kisatoya

ーご自身にとって4年ぶりとなる、インターネットを題材にしたホラー映画です。どのような思いで制作をされましたか。

ほんとはもうやりたくなかったんですけどね(笑)なにしろ、もう映画のテンポでは追えないくらい、ネット上の流行や常識の移り変わるスピードが速くなってしまっていますから。でも、いまの時代だからこそ表現できるネットの恐怖があるんじゃないかと思って作りました。

ーテーマがクソリプということですが、どこからこの発想が出てきたんでしょうか。

実体験ですね。以前、私が「最近の洋画のタイトルに付けられる副題が説明的すぎる。鑑賞者を馬鹿と思っているのが透けて見える」というツイートをしたんですね。そうしたら、見ず知らずの人から「説明的にしないと映画館に客が来ないからだよ。それもわからないようなお前みたいな馬鹿のために、苦労して説明的な副題をつけてるんだよ。バーカwww」というリプライが寄せられたんですね。これ、明らかに私の言わんとしていることとは違う部分に噛み付いてきてますよね。「そうしないと映画館に客が来ない」って、そんなことはわかってるって(笑)私が言いたいのは、そこまで説明してやらないと興味が持てないようなレベルの低い連中を相手にしていると、いずれ取り返しのつかないところまで映画界のレベルが下がっちゃうよ、ということなのに、その真意を汲み取るところには至らないで、ツイートに使われた言葉のみを捉えて脊髄反射的にリプライを送ってくる。これは私にとってはクソリプ以外の何物でもないんです。構造として言いがかりを受けるのと同じことですから。

ー人はなぜ、そのようなクソリプを送ってしまうんでしょうか。

それはその人がバカだから……って言うとまた炎上しますね(笑)みんな、何かの考えを持って暮らしてると思うんですね、普段。先ほどのクソリプを送ってきた人は、洋画の副題や、映画の宣伝方法について普段から意識が向いている人だと思うんです。だから、私がそれについて何か発言をしたことにすぐに引っかかっちゃったんでしょうね。

ー思わず話をしたくなってしまった、と。

しかもその人は、現在の洋画の副題を好ましく思っている人なんでしょう。だから、自分の普段の思いを私のツイートを見て、えいやっとぶつけてきたんでしょうね。

ーでは、初めから議論をするつもりではないと。

みんな自分が正しいと確認したいんですよ。だから、パッと送っちゃうんです。自分が優位に立つには、相手を否定するのが最も簡単ですからね。

ークソリプを送る人は皆、愉快犯なのかと思っていました。そうではないんですね。

ですから、私は、誰しもが、誰かにクソリプを送る可能性があると思っているんです。人間誰しも、自分の考えが正しいと思いたいですからね。

ーなるほど。それでこの映画の中で、クソリプをする人をゾンビにしたわけですね。

そうです。誰の心にもある自分を正しいと確認したい気持ち、それがクソリプを呼び、だから、人は容易にクソリゾを送ってしまうのだと思うんですね。

ー誰しもクソリプゾンビになる可能性があるということですね。さて、おしまいに映画の見所をお願いします。

あまり構えずに、楽しんで見ていただきたいですね。そして、自分ももしかしたらクソリプを送る側になる時が来るかもしれない、あるいは、もうクソリプを送ってしまっているかもしれない、と、そんな風に考えてくれると嬉しいですね。今を時めく女優たちの演技合戦を見るだけでも楽しめると思いますよ。存分に怖がってください。

映画評論家、著名人の皆さんから絶賛の声!

映画評論家・町田山智浩さん

ほんとにクソリプ送ってくるやつは、ゾンビじゃないかと俺も思ってたんだよね。ワラワラワラワラ次から次へと湧いてきて。木里谷監督はその辺、すごくよくわかってるんだよね。ネットで痛い目にあったことがある人は必見だと思います。

6月18日放送TSBラジオ「たまぬすび」より

ミュージシャン・ライスムター宇多麿

あー、やられたーっ!その手があったか!っていう場面の連続。カメラワークとかも、登場人物の心情がターン!と一発でわかるようなアングルをきっちり使ってるっていう、そういうところも行き届いてるんです。

6月22日放送TSBラジオ「ムービーウォッチング」より

映画翻訳家・こすぎ

ネットとかよくわからないけど、人間の本質的な悪意が描かれてると思ったわ。それと怖いのに映像が魅力的でうっとりしちゃうの。

「週刊大臭」6月30日号「こすぎの今週はこれを見なさい!」より

映画翻訳家・戸田末津子

やっばりネットは注意をせにゃいかんと思う。邦画なのに翻訳したいと思っちゃったよ?クソリブゾンビに絡まれたらもう最後、地獄で会おうぜ、ベイビー!

「主婦の生活」5月29日号「戸田末津子の翻訳こんにゃく」

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