「テレビの生放送が入っていますから」と、インフォメーションから迷子のアナウンスを断られた頬野あやちゃんの母親、頬野耳子は怒りと焦りが綯い交ぜになったような気持ちでいた。
    反抗期を迎えた娘はこのところ事あるごとに自分の云うことを聞かなくなっていたのだが、今回のように自分の前から姿を消してしまうようなことはなかった。
    最終的には泣きながら自分の後を追ってきていた。だが今回は違った。娘が本当に自分の前から消えてしまった。
    いま耳子は駆け出したいような衝動を抑えつつ、娘がいるというステージに向かっている。