IT業界で雄々しく活躍する"人"にフォーカスした情報サイト【IT・人】
■インターネットがすべてを変えてしまった
—— それでは将来に向けての、皆さんの取り組みをもう少し掘り下げてお伺いしたいと……
書籍S社 だいたいインターネットは良くないっ!
—— あらら。S社さん、だいぶ出来上がっちゃっいましたね。お顔も真っ赤で。
著作権J社 ああ、この人、酒乱の気が少しあるから。
音楽K社 そういや、さっきから凄い勢いで飲んでたし。酒、弱いんだよこの人。
書籍S社 ……インターネットが出てきてから、すべてが変わってしまったんだ!
—— 具体的にどのあたりが変わってしまったと?
書籍S社 だから全部だよ、全部! いいか、よく聞け! インターネットが出てくる前は、なにかを調べようとするときにはまず本を当たったもんだ。本屋に行き、図書館に行き、実際に書物を手に取ってページを手繰って調べたんだ。それがいまではどうだ、どいつもこいつもすぐにインターネットで調べやがる。なあにがグクレカスだ!
—— しかしそれは利用者の利便性から考えれば当然の変化ではないでしょうか。
書籍S社 当然だと? ……ばあか! あのなあ、インターネットで見つかる情報なんて嘘ばっかりなんだぞ! その辺の有象無象が生半可な知識で書き散らかしたようなものばっかりだ! それを便利がいいからってどいつもこいつも有り難がりやがって……こちとら、一冊の本を世に出すまでの間、どれだけの人間が関わってると思ってんだ!
—— ですが、時代の変化と共に、人と情報との係わり合い方も変わっていくのでは……。
書籍S社 だまれこのインチキ編集者が!
—— インチキって(苦笑)
書籍S社 だいたいなぁ、貴様みたいなインターネット上だけでいい加減な記事ばかり作ってるような、校閲もロクすっぼしたことが無いようなエセ編集者が、利いた風な物言いをするな!
音楽K社 いいぞいいぞ、もっとやれやれS社さん!
著作権J社 そうだそうだ、正義の鉄槌を振り下ろせ!
—— ちょっとお二人とも、そうやって煽らないでくださいよ(笑)
書籍S社 そもそもAmazonなんて……なんだいありゃあ! あんなもの、あとからやって来たよそ者、言ってみりゃあ外来種のくせに、俺たちの市場をめちゃくちゃに荒らしやがって。送料無料ですぐに家まで届くってだけでも、我々にとっては大打撃なのに、それだけじゃあ飽き足らずにこんどはKindleだ電子書籍だと来やがる。俺たちを一体なんだと思ってやがるんだ! おいこら、チューハイが空だぞ! おかわり持ってこい!
—— しかしそれが時代の流れというものではないでしょうか。ネットで発売の情報を知り、そのまますぐに注文ができて、しかも明くる日には届いてしまう。さらにKindleなどの電子書籍となれば在庫切れの心配もないわけですし。読む形態はどうあれ、書籍に書かれている情報が得られればいいわけです、読者は。
書籍S社 だまれ! 貴様、さっきから我々の話をどう聞いていたんだ!? そんなものは読書とは言わんのだ! 我々が提供するべきは情報ではなく”体験”なのだ! 作品を商品として手に取り、重みを感じ、ページを手繰ることに喜びを見いだしてもらう……それこそが読書であり由緒正しき作り手と受け手の関係だ!
—— そうは言ってもKindleなどを触ってしまうと、掌の中に書店があるようなもので、便利としか言いようがありません。
書籍S社 あのなあ、Kindleなんて、あんな電子書籍なんかが一般化してみろ、さっきのK社さんの話じゃないけど、コンテンツ業界は違法ダウンロードにまみれちまうぞ! ようやく自炊を代行する業者を撲滅できそうな風向きになってきたってのに!
—— ですが、電子書籍にしても、自炊にしても消費者がそれを望んでいるからこそ、普及しているのではないでしょうか。
書籍S社 馬鹿なことを言うんじゃないよ! そんなものは消費者がAmazonやAppleにだまされてるんだよ! だいたいな、ユーザーなんて、我々が管理して先導してやらないと、すぐに我々にとって不利益なことをするんだ! コンテンツを違法にばらまくような事をするんだ!
音楽K社 そうだそうだ! 消費者なんて一皮むけば泥棒とおんなじだ!
著作権J社 しかもそれらを取り締まろうとしている我々の正しさを一向に理解せず、蛇蝎の如くに嫌う!
書籍S社 よし! みんな、もっと飲もう! そして俺たちの正しさをどんどんアピールしていこう!
—— せっかく盛り上がっているところに水を差すようですが……たとえば漫画家の佐藤秀峰さんは既に電子書籍の世界で、一定の成果を挙げられています。自作をネットを通じて無料で公開するなど、時代の変化に対応した新たな取り組みを積極的に展開されています。
書籍S社 ……ふん。それは彼が所詮、作家として偽物にしか過ぎないということだ。
—— では、本物の作家とはどういったものとお考えでしょう。
書籍S社 じゃあね、反対に聞くけど、ネットで無料公開をして、いったい誰が潤うの?
—— ……それはみなさんのほうが良くご存じかと。
書籍S社 作家とデータの配布元だけだよ? ほんとに儲かるのなんて。そりゃ、Amazonと契約すれば印税が70%だとか、作家にとっちゃオイシイ話だろうけど……そんなことが許されていいと思う?
—— ……まあ、げんに市場は開かれてしまったわけですから。
書籍S社 でもそれが当たり前になったら、出版社はどうなるの? 編集の人間は要らないの? 印刷屋さんは? 流通さんは? みんなそれぞれ家族を抱えて生活に追われてるんだよ。それら人々を守ることまで考えてこそ、本当の作家というものだよ。
—— はあ……先ほども言いましたが、それらのことは、読者に関係のないことばかりのような気がしますが。
書籍S社 ……関係ないだと?
—— ええ。それは冷蔵庫が発明されて、氷屋さんが淘汰されたりしてきたわけですし。それに、読者にしてみれば、面白い作品が読めればそれでいいわけですから。
書籍S社 ばか! お前、マジ、ほんとに、もう、すごいばか!
—— そんな,正面切って人をばか呼ばわりって(笑)
書籍S社 さっきも言ったとおり、一冊の本が世に出るまでは数多くの人がかかわってるんだ! その人たちを無視するのか貴様は! その人たちに死ねというのか貴様は!
—— そんなことは言ってませんよ(苦笑)それを言うなら電子書籍にだって、テキストを規定のフォーマットに変換する人など、陰で活躍する方々がいるでしょう。時代の変遷と共に、それに即した形で、そこに係わる人々の入れ替わりがあるのは当然ではないでしょうか。
書籍S社 かあーっ! 所詮は貴様もインターネットの側の人間だな! いいか、貴様らみたいな、インターネットを妄信するあまり、現状を否定して回る連中のことを、我々のような、叩き上げられた本物の編集者がなんて呼んでるか知ってるか!?
—— さあ。
書籍S社 知らざあ言って聞かせてやる! 裏切り者って呼んでんだ!
音楽K社 その通り!(拍手しながら) 毛唐に魂を売って、日本の商習慣を捨てた非国民だ!
著作権J社 そうしてそんな非国民を取り締まるのが、我々、著作権を管理するJ社だ! 形作られた文化を守っているんだ!
Vol.03 【4Kテレビに死角なし】
▶大手家電メーカー編Vol.02 【ネットに掠め取られた視聴者】
▶テレビ局員編
Vol.01 【まとめサイトにやれんのか!?】
▶四大新聞記者編