IT業界で雄々しく活躍する"人"にフォーカスした情報サイト【IT・人】
我々の前に次々と姿を現す数々の新商品。
ひとつの商品が世に出るまでには、我々消費者には想像もつかないほど、大勢の人々が関わっている。設計者、デザイナー、技術者、研究員、工員、マーケティング、営業、広告、販売員、アフターサービス……これら人々が会議に会議を重ね、膨大な数の試作品を作り、黙々と商品を組み上げ、販売店を奔走する。その結果、我々の目の前に新商品が姿を現す。
そうした、ひとつの商品に関わる多くの人々の中にあって、消費者の前にはけして姿を見せない人々がいる。
そうしてまた、ヒット商品には必ずといっていいほど、こうした”陰”で活躍する、我々一般消費者にとっては「姿なき人々」ともいうべき人物がキーパーソンとして重要な位置を占めている。
各業界に於ける「姿なき人々」を紹介していく本コンテンツ、今回は家電業界のキーパーソンに、匿名を条件にご登場いただき、その知られざる仕事ぶりを解き明かしていく。
【平井ポンヌフ春義,IT・人】
私の仕事は「逆」なんです
——本日はようこそお越しくださいました。
某氏 ほんとに大丈夫なんですよね、私の素性がバレるようなことにはなりませんよね。
——ご安心ください。お名前は出しませんし、お写真も個人が特定出来る形では出しませんから。
某氏 『IT・人』さんを信用していないわけじゃないんですけど、私が取材を受けたことが会社にバレると、ほんとにクビになっちゃいますんで。これから子どももお金のかかる年頃になってきますし。
——それだけ会社にとって重要なお仕事をされているということですよね。大丈夫です。あなたの素性が絶対に割れないよう、然る可き公的機関の協力を得る形で、万全の体制を敷いていますので。
某氏 わかりました。疑うようなことを言ってすみませんでした。
——いえいえ。それでは、あらためてよろしくお願いいたします。
某氏 こちらこそよろしくお願いいたします。
——まずはお答えいただける範囲で、お仕事の内容を教えていただけますか。
某氏 国内の某家電メーカーで、商品開発に携わっています。
——差し障りがなければ、所属の部所をお教えいただけますか。
某氏 具体的には言えませんが……商品の開発や発売の決定をしているところです。
——ということは、あなたの判断によって新商品の開発や発売が決まる、と考えてよろしいのでしょうか。
某氏 ええ、まあ、そうですね。
——商品の開発や発売についての、最高決定権を持っていると。
某氏 いえいえ、私個人にそこまでの決定権はありません。その権利を持っている人の、判断を助けする立場ですね。
——判断を助けるというと、決定権を持つ人に助言を与える、的なことですか?
某氏 そうです。企画部や技術部、または重役から寄せられる新商品の企画や、開発途中の試作品について私が確かめ、その判断や意見を決定権を持つ人間に伝えるのです。
——アドバイザーのようなお仕事ですね。
某氏 そうですね。一言で説明するとなると、その表現が一番しっくり来ますね。ただ、ひとつだけ普通のアドバイザーとは大きく違うところがあるんですよ。
——と、いいますと?
某氏 逆なんですね。
——逆?
某氏 ええ。逆なんですよ、普通と。
——ええと、すいません、意味がよくわからないのですが。
某氏 「逆」というのは、別の言い方をすれば「反対」のことで、普通の状態とは異なる方向性から……、
——いやいや「逆」という言葉の意味はわかります。私だってもう結構な大人なんですから。そうではなくて、いったいどのように普通のアドバイザーとは異なっているのでしょう。
某氏 新たな商品の発売が決定されるに際して、そこにアドバイザーの意見が関わる場合というのは、ゴーサインを出すことだと思うんですよね。
——ええ。この商品は完成の域に達した、というような判断を客観的に行う人、というイメージがあります。
某氏 それが私の場合は逆なんですね。
——と、いうことは……。
某氏 私がNOと判断した商品に限って、開発や販売のゴーサインが出るということです。
——……。
某氏 あれ。なんだかぼんやりしちゃってますね。
——えっと、ごめんなさい。やっぱり意味がわからないです(笑)
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