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国内メーカーよ、私を落胆させてくれ!
——本当にあらゆることがマイナーというか、負の方向に判断が向いてしまうんですね。
某氏 ええ。普段の暮らしにも結構影響がありますよ。
——たとえばどんなものがありますか。
某氏 昨年、結婚をしたんです。
——おめでとうございます。
某氏 ありがとうございます。お見合い結婚だったんですが、何人かお見合いをさせてもらった中で、やはり……
——いちばんピンとこなかった人をお選びになった。
某氏 お陰で大変に円満な夫婦生活を送っています。妻も私の特徴を良く理解していてくれて、いまでは何かを決めるときには必ず、私の判断の反対を選んでますよ。新居を決めるときにも、私がいいと言ったほうの反対を選びました。不動産屋さんは妙な顔をしていましたけれど。
——マイノリティの側についてしまう特性も、上手に制御出来れば、けして悪いことばかりではないんですね。
某氏 ええ。他にも会社の中でも、いやな派閥争いに巻き込まれたりませんし。
——え? どういうことでしょう。ちょっとお話が急で。
某氏 どこの派閥からも忌避されるんですよ。お前が来ると負けるって。
——なるほど。それも切ないですね。
某氏 でも、煩わしい人間関係に巻き込まれずに済むので気は楽ですよ。会社員にとって一番難しいのは人間関係ですから。
——お話を伺っていると、実に楽しそうですね。充実されているというか。客観的にみると、ご自身のお考え、ご判断とは正反対の結果ばかりが現れ、それが成功に繋がっているということですから、もっと自己を否定なさっていてもよさそうなものだと思います。
某氏 いまの役割、職種になってからしばらくの間は、やはり嫌な思いもしましたし、仰るような自己否定に陥ることもありましたけど、先ほどもお答えしたように、そこはもう通りすぎましたよ。
——通り過ぎた。何かその切っ掛けになるようなことがあったのでしょうか。
某氏 ひとつの言葉に思い至ったんです。
——どんな言葉でしょう。
某氏 昔から言うじゃありませんか「負けるが勝ち」って。
——なるほど。その言葉に思い至ったことで、なにかが吹っ切れたんですね。
某氏 それこそパーッと視界が開けるような思いがしました。それからは自信も出てきましたしね。
——だから楽しそうに見えるんですね。お話振りからもその自信のほどが伺えます。
某氏 この頃はもう、人から判断を求められるとぞくぞくしてくるんですよ。マイノリティに向かう自分の感情が湧いてくると、もう嬉しくて。
——ご自身の道を見つけられたんですね。羨ましい限りです。
某氏 ただ、ちょっとこのところ心配な事もあるんですよね。
——心配? どういったことでしょう。
某氏 楽しすぎるんですよね、いま。
——楽しすぎる?
某氏 我が社の商品は勿論のこと、我が国のメーカーが発売するあらゆる商品が素晴らしいものに思えてしまうんですよ。特に我が社も係わっている家電品などは、どの会社の製品を見ても、爆発的なヒット商品になりそうな気がしてしまうんです。だから、見るもの触るもの、すべてにわくわくしちゃって。
——それはひょっとして、いまの国産メーカーの商品がどれもダメということでは……。
某氏 んー、やっぱりそうなっちゃいますよねぇ。私の判断がこれまで同様に外れる、というか、逆の目が出るのだとしたら。
——……。
某氏 このあいだも家電量販店で4Kテレビの売り場を覗いたんですが、もう売り場自体が光り輝いているように見えて、思わず目を逸らしたほどです。
——私の目には同じ売り場が沈んで見えます。過去の栄光から脱し切れていないというか。私が店頭をのぞいたとき、店員に4Kテレビについて尋ねているのは、きまって人生を勝ち抜けしたような団塊世代のご夫婦ですから……やっばり心配だなあ(苦笑)
某氏 ですからいまは、早く国産メーカーから、私をひどく落胆させるような製品が出てきてほしいと願っています。
——私もそう願います。
某氏 いま、AppleやGoogle、Amazonが作った製品を見るときにはやっぱり「ダメだろうこれは」という気分になるんです。
——私はその真逆の気持ちになります。
某氏 でしょうね。それが普通の感覚だと思います……って、やっぱりこんなことは会社の中では言えないなあ。回り回った会社批判になっちゃうし。だからこそ、ちゃんとプライバシーの保護をお願いしますね。
——わかりました。いっそう厳重なセキュリティを確保することをお約束します。いずれにしても、早くあなたがNOを連発できるような状況が訪れるといいですね。本日はありがとうございました。
ご注意
※某氏の素性についてのお問い合わせは、編集部ではいっさいお受け出来ません。悪しからずご了承下さい。
【聞き手・構成:平井ポンヌフ春義、IT・人】
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